二十歳を過ぎてから何度かお酒を飲むことがあってもすぐ頭が痛くなったり、泥酔してはろくなことをやらかさない家族たちのことを見ていた影響で今でもお酒は好きではありませんが、唯一私が嬉しくて暖かい気持ちになった酒の席の話です。
専門学校を卒業するときにお世話になった先生方とともに謝恩会を行いました。
正直出るまでは気が進まずやだなと思っていたのですが、お世話になった先生方にお酌して回っているうちにある先生のところでふっと呼び止められました。
私は大輔という名前なのですが、「大ちゃん、ちょっとそこに座れ」と先生がおっしゃるのです。
「おれは大ちゃんが好きや。なんでもっと最初から頑張らんかったんか?おれは期待しちょったんぞ。なんで最初から本気を出さんかったんか?頑張れよ」と肩をたたいてくださいました。
成績がけしていいほうではなく、むしろ綱渡りでギリギリまで勉強に打ち込むことができず、進路に悩んでもがきながらようやく国家試験が終わって、その上でのその先生のお言葉は本当にしみました。
あまりにしみすぎて、卒業式では一滴も出なかった涙が危うく出そうになりました。
結局出なかったけれど。
その他にも、教師と学生という壁がその日だけは消えて、ざっくばらんにお酒を飲めたことを思い出します。
「大輔。仕事も音楽も両方やれ。両方頑張れ」と言ってくださった先生もいましたし、私にとって唯一良いお酒の席だったなと思っています。