職場の先輩の退職慰労会での事です。
私がその飲み会に参加すると伝えると、ほとんどの人が驚きました。
なぜなら、私と先輩はかつて、社内を騒がすほどの大きな喧嘩を起こしたからでした。
様々な事を丁寧に教えてくれる先輩とは、初めは上手くやっていました。
それが崩れたの原因は、特にどちらが悪いという物ではありません。
簡単にいうなら、「長く部署を支えた保守派の先輩」vs「新しい技術も取り入れたい革新派の私」と言ったところでしょうか。
「革新派」などと格好良く言いましたが、ただの生意気な新人であったことは否めません。
基礎もわからないまま革新など出来ませんから。その一方で、先輩も頑なに新人の意見を取り入れない所がありました。
上司もそれを知っていたのでしょう、結局その部署には私が残り、先輩は異動となりました。
それから月日は流れ、二年。
その間、私は当時の先輩の思いを知りました。
一つの部署を任される事の重さを知りました。
それをずっと謝りたい、そう思いつつも、結局先輩の退職日まで言えずにいたのです。
「先輩、あの時は、すみませんでした」 先輩の慰労会でそう言えたのは、正直お酒の力があったからでした。
先輩は一旦グラスを置いて私に向き直り、 「いや、あの時は私が悪かった。謝らないでほしい」 そう、返してくれました。
その後暫く私達は、互いのグラスにお酒を注ぎ合い、謝り合ってはそれを制す…を繰り返したのでした。
先輩が退職された今も、たまに近況報告し合う仲です。