私の家は、物心つく前から酒飲み達のたまり場でした。
町内会の集まり、懇親会、町おこしイベントの後の打ち上げと、何かある度に私の家は会場となり、子どもの時から酒飲み達の相手をさせられていました。
起きた厄介ごとの数など上げれば切りがありません。
「俺の嫁にならないか」と抱きつかれたり、落ちてるビール瓶や缶で怪我したり、残った宴会料理を何日もかけて食べさせられたりなど、本当に思い出すだけでもうんざりします。
そんな思い出の中でも、家を出るきっかけとなったのが「あの事件」でした。
あれは町おこしイベントの打ち上げの時、私が20歳の頃でした。
私が飲酒可能な年齢になったと知った酒飲み達は、執拗に酒を薦めてきましたが、私はなんとかそれを退け、いつも通りお酌をしたり皿を用意したりなどしていました。
突然、ある一人の老年の男性が立ち上がり、私に寄りかかるように迫ってきたかと思うと、手に持っていた日本酒を飲むよう強要してきました。
反射的に体を押して逃れようとした瞬間、「げー」っと嗚咽の声。
立ちくらみでも起こしたのか、男性は吐き出したのです。
私の服に大量にかかる吐瀉物、それを見てもらいゲロする他の人々。
宴会場はあっという間に地獄絵図となりました。
当然その場はお開きとなり、私は汚れた服のまま会場を片付け、数日後に家を出ました。
今でも、お酒の席は苦手です。